鉄道車両部品試験関連規格
鉄道車両に取り付ける機器の試験規格
IEC61373、JIS E 4031
第2次大戦後の我国の振動技術の発展は鉄道関係の技術開発によるところが多い。1964年に最初の鉄道関係の振動試験のJISが作成された。現在のJIS E 4031:JA,JB鉄道車両部品―振動試験方法はこれが何度か改正されたものであり、試験思想に係わるような改正はない。この規格の試験は正弦波試験である。また、加速度振幅を複振幅(peak to peak)で表している珍しい規格である。試験条件は多くの実測データから決められているのは当然であるが、試験時間を短くするために、試験加速度を上げているのもまた当然のことであるが、用いた加速の指数を明記しているのは貴重である。
実環境の加速度に対する試験加速度の比をα、実環境で振動を受ける時間に対する試験時間の比をλ、加速の指数をmとするとマイナー則から次式が成立する。

JIS E 4031ではm=6.64を用いている。この場合、加速度比2倍なら時間比は1/100、加速度比 √2 倍なら時間比は1/10になる。
JIS E 4031:JA(正弦波振動試験)の特徴を[ 表6-1 ]に示す。
JIS E 4031:JB(衝撃試験)の特徴を[ 表6-2 ]に示す。
1999年にIEC 61373 Railway applications―Rolling stock equipment―Shock and vibration testsが発行された。これは、鉄道車両に取り付ける機器、部品の振動・衝撃試験規格で、対象機器はJIS E 4031:JA,JBと同じであるが、ランダム振動になっている。レールの凹凸が車輪、輪軸、サスペンション、ボギー、サスペンション、車体へと振動として伝達するから、車両の振動は、基本的にはランダム振動である。 2005年度にJIS E 4031にIEC 61373を取り込むことを目的としたJIS改正原案が作成された。現在、ヨーロッパ向けに輸出をする場合は、国内でもIEC 61373が適用されている。この規格でも規格の開発に用いた加速の指数が明記され、m=4を用いている。この場合、加速度比2倍なら時間比は1/16になる。この規格の特徴を[ 表6-3 ]に示す。
その他
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IEC 61373の改正版が2010年に発行されている。
- a)2010年度版では、”受渡当事者間で事前の協定があれば、多軸試験を適用しても良い”との記述が追加され三軸同時加振が可能となっている。これにより試験時間が短縮されて試験費用の削減が可能となることがある。
- b)二つの折れ点を持つ疲労損傷特性を採用して耐久試験レベルを計算した値に変更する。具体的には繰り返し数 n<5×106 加速指数 m=4 、5×106≤n≤100×106ではm=6、100×106<nではm=0となる曲線を用いる。この結果耐久試験レベル(RMS値)は車体搭載機器及び台車搭載で0.72倍、輪軸搭載機器で0.48倍になる。
- c)運用予定の路線での実測振動データがある場合は、受け渡し当事者間で合意すれば実測データから試験条件を決めてもよいとする。
- JIS E 4031:2008の改正版はIEC61373:2010を基として2013年5月に発行された。 2008年度版では1994年度版で定められていた正弦波振動試験及びJIS E 4032の衝撃試験が、附属書JA,JBに期限を2017年3月31日までの期限付きで国際規格によらない振動試験方法として規定していたが、今回の改正では付属書JA,JBに正弦波試験・衝撃試験が規定として残されることとなった。これは“鉄道車両でも輪軸、機関の回転などに起因する周期的な正弦波状の振動があるので、それらを想定する場合は正弦波による振動試験が必要である。”との指摘があったためである。