Report 振動の豆知識

Chapter1
知っておきたい地震の予備知識

1.地震の大きさの単位

地震の大きさを理解するためによく聞く用語を説明します。

振動数

1秒間に繰り返す回数をいい、単位はHzを使います。一般的な地震は数10Hz以下が主成分で、水平方向より垂直方向の波の方が振動数が高くなっています。

  • 振動数グラフ
  • 地震波形データ

加速度

地震の加速度を表す単位は※Gal(ガル)を使います。 980Gal=980cm/s2 ≒ 1G 阪神淡路大震災、中越沖地震、東日本大震災とも1000Galを超えた波形が記録されており重力加速度(1G)以上の 加速度が発生したことが分かります。

Gal

加速度の単位で1Gal=1cm/s2です。地震の分野では一般的に用いられており、新計量法による国際単位系(SI)でも用途を限定する非SI単位系として、「重力加速度」「地震」には猶予期限なく、使用が認められています。

マグニチュード

震源地での地震の大きさを表す尺度です。 一般に震源が深くマグニチュードが大きいほど広域に揺れが伝わります。

マグニチュードイメージ1
  • 震源が深い方が広く拡散。
  • マグニチュードが同じでも震源の深さが異なると地表の激しさが異なる。

震度

現在、気象庁が発表する震度は震度計の計測震度を用いて表しています。計測震度自体は加速度波形を元に演 算されています。その演算方法により同じ最大加速度であっても地震の継続時間と含まれる振動数の違いにより 計測震度(震度)が異なることとなります。

震度階

気象庁が規定している値で阪神淡路地震以降見直しされ、0 ~4・5弱・5強・6弱・6強・7の10段階に分かれます。

気象庁
震度階
計測震度 人間 ライフライン
0 0.5未満 人は揺れを感じない。
1 0.5~1.5未満 屋内にいる人の一部がわずかな揺れを感じる。
2 1.5~2.5未満 屋内にいる人のほとんどが揺れを感じる。
眠っている人の一部が目を覚ます。
3 2.5~3.5未満 屋内にいる人のほとんどが揺れを感じる。
恐怖感を覚える人もいる。
4 3.5~4.5未満 かなりの恐怖感があり、一部の人は身の安全を図ろうとする。眠っている人のほとんどが目を覚ます。
5弱 4.5~5.0未満 多くの人が身の安全を図ろうとする。
一部の人が行動に支障を感じる。
安全装置が作動し、ガスが遮断される家庭がある、まれに水道管の被害が発生し、断水することがある。
5強 5.0~5.5未満 非常な恐怖を感じる。
多くの人が行動に支障を感じる。
家庭などにガスを供給するための導管、主要な水道管に被害が発生することがある。
6弱 5.5~6.0未満 立っていることが困難になる。 家庭などにガスを供給するための導管、主要な水道管に被害が発生する。
6強 6.0~6.5未満 立っていることができず、はわないと動くことができない。 ガスを地域に送るための導管、水道の配水施設に被害が発生することがある。
7 6.5~ 揺れにほんろうされ、自分の意志で行動できない。 広い地域で電気・ガス・水道の供給が停止する。

震度の算出方法

  • 地震情報などにより発表される震度階級は、観測点における揺れの強さの程度を数値化した計測震度から換算 されるものです。
    計測震度は、地震計内部で以下のようなデジタル処理によって計算されます。
    デジタル加速度記録3成分(水平動2成分、上下動1成分)のそれぞれに、フーリエ変換・フィルター処理・逆フーリエ変換の手順で、別紙に示す特性のフィルターを掛ける。得られたフィルター処理済みの記録3成分から、ベクトル波形を合成する。ベクトル波形の絶対値がある値a以上となる時間の合計を計算したとき、これがちょうど 0.3 秒となるようなa を求める。このa から I = 2 log a + 0.94 により震度(実数値) I を計算する。 震度(実数値)の小数点3位以下を四捨五入した値を震度(詳細値)とする。また、震度(詳細値)の小数点2位以下を切り捨てた値を計測震度とする。求められた計測震度と震度階級の対応は以下の通り。

  • 気象庁震度階 計測震度
    0 I < 0.5
    1 0.5 ≦ I < 1.5
    2 1.5 ≦ I < 2.5
    3 2.5 ≦ I < 3.5
    4 3.5 ≦ I < 4.5
    5弱 4.5 ≦ I < 5.0
    5強 5.0 ≦ I < 5.5
    6弱 5.5 ≦ I < 6.0
    6強 6.0 ≦ I < 6.5
    7 6.5 ≦ I
  • フィルターの総合特性(両対数スケール)

    フィルターの総合特性(両対数スケール)
  • 継続時間の算出方法

    継続時間の算出方法
  • 継続時間と敷居値aの関係

    継続時間と敷居値aの関係

継続時間と敷居値aの関係

  • 継続時間と敷居値aの関係
  • また、制御用に地震計を使用する場合、最大加速度(Gal)を警報レベルとして使用することが一般的です。最大加速度を使用する場合は、瞬時に警報出力できるという利点があります。

    従来の震度階 加速度(Gal)
    無感 ~0.8
    1 0.8~2.5
    2 2.5~8
    3 8~25
    4 25~80
    5 80~250
    6 250~400
    7 400~

2.SI値

SI値とは・・・

地震動による構造物への影響を表現する方法として速度応答スペクトルがあります。
構造物の剛性が高い場合、その主な固有周期は0.1~2.5秒間にあり、この間のスペクトル積分値(面積値)をもって、地震動の破壊力を表す1つ 目安とすることが可能であり、この値を「スペクトル強度=SI値」と呼んでいます。

つまりSI値とは、地震が構造物に与える
破壊力を知る指標のこと。

なぜSI値なのか…

  • 同じ50Galの地震であっても、揺れ方や時間等で構造物への被害は異なってくるため、加速度(Gal値)のみで判断する従来の地震計では、実際の構造物の被害については判断できません。
    しかし、『自身が構造物に与える破壊力を知る指標』であるSI値を用いることにより、実際の構造物への被害を把握することが可能となります。

  • なぜSI値なのか

長岡市水道局と小千谷市ガス水道局を
比較した場合

加速度は小千谷市ガス水道局の方が高かったが、SI値が低かった為、被害はなかった。
長岡市水道局は、加速度は低かったものの、SI値が高かった為、被害が発生した。

総合資源エネルギー調査会 都市熱エネルギー部会 ガス安全小委員会
「新潟県中越沖地震もおける都市ガス事業・施設に関する検討報告書 平成20年5月」

新潟県中越沖地震もおける都市ガス事業・施設に関する検討報告書 平成20年5月

3.地震計の構成

地震計の構成
  • 計測部にはケースの中にXYZ3方向のサーボピックアップと演算回路が内蔵されています。
  • 計測部でアナログ処理から警報出力などの基本的な機能まで有しています。
  • 表示器を接続することで警報表示をするだけでなく、拡張機能をご活用いただけます。

4.センサーの原理

地震を検知するセンサーには大別すると「電気式」と「機械式」があります。
IMVの地震計はすべて電気式センサーを採用しています。

電気式

サーボ式

サーボ式 イメージ

電気式の代表的な原理です。直線信号の加速度から安定して出力ができます。
地震計にはこの素子を3軸に組み込みます。

サーボ式 図

機械式

  • 落球式

    鉄球と受座の寸法比で反応加速度値を設定。
    欠点:直下型地震に未対応・最大レベルがわからない。

    落球式
  • 振子式

    接点とマイクロメーターの寸法比で反応加速度値を設定。
    欠点:直下型地震に未対応・最大レベルがわからない。

    振子式

5.被災度判定方法

5.被災度判定方法

地震により被災した構造物を継続して使用(入室)可能か否かの判断は、専門知識を有した方以外には困難です。そのため地震観測結果を用いて定量的に判断する取り組みが進んでおり、次のパラメータ等を評価基準とする検討が行われています。

層間変形角

地震により生じる階層ごとの変位と、各階の高の比によりもとめられます。
地震観測結果を用いる場合、センサーを設置し検出されたデータを元に変位量を算出し、建造物の階高と対比して割り出します。なお、加速度センサーの値からは、弾性変形に起因する変位のみ算出可能です。塑性変形を求める場合は、けがき針やダンパー変位量等が必要となります。 建築基準法などでは層間変形角の大きさが、設計上のしきい値として用いられています。

  • 層間変形角
  • 層間変形角に関する基準値

    基準名 しきい値
    (分数)
    しきい値
    (小数)
    規定参照
    鉄筋コンクリート造(RC造) 1/200 0.005 建築基準法第82条の2
    国交省国営整第25号
    鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) 1/200 0.005 建築基準法第82条の2
    国交省国営整第25号
    許容限界 1/50 0.020 荷重増分解析法の演算限界

最大加速度

地震の強さを表すパラメータとして最大加速度が用いられています。この場合、一般的に単位は[Gal]となります。
家具や什器が転倒あるいは移動する度合いに相関がある為、室内空間の安全性の評価にも活用されます。