従来のランダム試験では再現しなかった故障モードを、新しいランダム試験では再現できるようになりました。
従来の試験の問題点
試験リアリズムの観点から、振動試験は正弦波試験からランダム試験に移行してきました。しかし、現在の主流であるランダム試験で実環境を十分に再現していると言えるでしょうか?答えは「NO」です。なぜなら、輸送振動などの現実の振動はランダム試験の前提であるガウス性ランダム振動ではなく、より大きなピークが発生している非ガウス性ランダム振動であることが多いからです。
さらなる試験リアリズムの要求
企業を取り巻く環境は、目まぐるしく変わってきています。その変化に対応するには、製品に対する「性能向上」と「コストダウン」などの相反する要求を克服しなければなりません。そのため、各企業では以前にもまして、過剰品質でもなく過少品質でもない実環境に応じた最適な設計の製品を開発することが必要になってきています。振動試験は、このように設計された製品の品質を評価する大切な試験です。振動試験の結果は、どのような動的なストレスを製品に印加するかによって大きく変わります。そのため、昨今の緻密に最適化された設計を正確に評価するには、振動試験は実環境に近いものでなければなりません。このような背景によって、振動試験で精度よく実環境を再現する要求は高まってきています。
問題点を解決するK2/Non-Gaussian
弊社では、大阪府立産業技術総合研究所の細山亮研究員にご協力を頂き、この課題を解決する非ガウスランダムコントローラK2/Non-Gaussian を開発しました。K2/Non-Gaussian を利用すれば、従来のランダムコントローラでは再現できなかった非ガウス性ランダム振動特性を有する現実の振動をより忠実に再現することができます。K2/Non-Gaussian で再現できる非ガウス性ランダム振動特性は、波形のピークレベルを示すクルトシス(尖度)と波形の正負の偏りを示すスキューネス(歪度)という2つの非ガウスパラメータです。
非ガウス性ランダム振動試験の有効性
ガウス性ランダム振動試験の有効性を、高速道路走行時の荷台振動の再現結果で説明します。下図の左側が再現結果の波形データの一部です。左から荷台振動の実測波形、荷台振動をランダムコントローラで再現した波形、荷台振動をK2/Non-Gaussian で再現した波形です。これら3 つの波形のPSDとrms値は同じです。
いずれの結果を見ても、従来のランダムコントローラで再現したガウス性ランダム振動よりも、K2/Non-Gaussian で再現した非ガウス性ランダム振動のほうが、実振動に近いことが一目瞭然でわかります。一般的に、大きい加速度ほど製品に与える影響は大きくなりますが、K2/Non-Gaussian は、実振動のこの特徴をよく再現できています。従って、この例では、K2/Non-Gaussian のほうが、ランダム試験よりもより実環境に近い疲労を製品に与えることができると言えます。
- K2/Non-Gaussian の特徴
試験目標の自動計算
K2/Non-Gaussian では、ユーザーが複雑な処理を行わなくても、実測の波形データさえあれば、PSD やrms値、非ガウスパラメータを内部で自動計算して、これらを目標として利用することができます。
実環境に応じた非ガウス性ランダム波形の再現をするとき、同じ非ガウスパラメータであっても、非ガウス性ランダム振動は一意には決まりません。K2/Non-Gaussian では、より実環境に近い振動を再現するために、再現する非ガウスパラメータを選択できたり、非ガウス性ランダム波形の生成方法を選択することができます。
多自由度試験
一般的に実環境では、製品は特定の1方向からではなく、複数方向から同時に動的ストレスを受けます。K2/Non-Gaussian の多自由度版は、複数方向に対して同時に特性の異なる複数の非ガウス性ランダム振動を再現することができます。
非ガウスパラメータについて
従来のランダム試験のランダム振動の特徴を表す指標は、PSD(パワースペクトル密度)とrms値でした。非ガウスランダム試験では、これに加えて、クルトシス(尖度)とスキューネス(歪度)という非ガウス性の特徴を表す指標が追加されます。
クルトシス
クルトシスは、振幅確率密度の分布のゼロ付近のとがり具合をあらわす指標です。 クルトシスが大きくなればなるほど、ゼロ付近のとがりが大きくなり分布の裾野が厚くなる為、大きなピークのランダム振動になります。ガウス分布のクルトシスは、”3”です。
スキューネス
スキューネスは、振幅確立密度の分布の非対称性を表す指標です。スキューネスが正の値であれば、プラス側に大きなピークが発生し、負の値であれば、マイナス側に大きなピークが発生します。ガウス分布のスキューネスは”0”です。